26章

4/6
前へ
/549ページ
次へ
「蓮、わかってるんだろうな」 蓮の真ん前で康介さんは仁王立ちして目をギラギラさせている。 蓮はというと……のんきにシューズを履いていて靴紐を結んでいる途中。 「なんのこと?」 「おまっ、忘れたとは言わせないぞ」 蓮は眉間にしわを寄せて大きなため息をついた。 「はあ……康介もしつこいね」 「俺に怖じ気ついたのか。男だったら正々堂々と戦え!」 「はいはい、わかったよ。勝負すればいんでしょ」 なんだか嫌な雰囲気。 でもそんなことを掻き消すように松田さんが 「なんの話?」 って頭の上にクエスチョンマークをたくさん出している状態で。 「井上さん」 ちょっと、ちょっと、と松田さんが手招きして呼んでいる。 「ねえ、康介が勝負とか言ってるけど何があったの?」 う……ん 「私もわからないんです」 よく考えたらなんでこんなことになったのか、ほんとにわからない。 松田さんはまったく理解していないのか…… 「じゃ、チームは蓮と康介。俺と井上さんね」 「春樹!それじゃ勝負になんねぇだろ」 康介さんからは闘志が湧き出ている。 「俺が美優と組む。康介は春樹」 蓮はあっさりとチームを決めて、それを康介さんは不服な顔をして、 「俺と美優ちゃんで」 「だめ。無理」 虚しく康介さんの意見は蓮に却下されてしまい…… 康介さんはガクンと肩を落とした。 「美優、怪我しないように準備体操しておきなよ」 「うん」 「なんだよ、俺に対する態度とぜんぜん違うじゃん」 「フッ、康介とはライバルだから」 と、蓮が鼻で笑えば、康介さんはじろっと蓮を睨みTシャツを腕まで捲り上げコートに向かった。
/549ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23659人が本棚に入れています
本棚に追加