26章

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「美優いい?打てる時はシュート打っていいから」 「うん」 ポンと私の頭を叩くと、 「やるからには勝つよ」 蓮は真剣な眼差しで康介さんを見ていた。 「うん」 蓮の足を引っ張らないように頑張らなくちゃ。 康介さんチームからのボールで始まる。 「凄い……」 ブランクがあるのに何この動き…… ほんとにこの人達、何年もバスケから離れてたの? 松田さんが機敏な動きでドリブルをして蓮をすり抜けていく。 私はみんなの迫力に呆然として立ち竦んでしまった。 「美優っ」 「あ、はいっ」 蓮から正確なパスを受け取るけど、すぐに康介さんという大きな壁にぶつかり、とてもじゃないけどシュートなんて無理。 なんとか蓮にパスを……と思って蓮を探せばすぐにボールを取りにきてくれて、 シュッ アーチを描いて吸い付くようにボールはネットを通る。 「きれいなフォーム……」 態勢を崩すことなく真っ直ぐ伸びる右腕。 太陽の下にいるせいか汗が反射して光っている。 格好いい。 自分でプレーするより今日はベンチで蓮を見ていたいかも。 「美優、ぼっとしてないで」 「う、うん」 私の実力じゃ、当然ついていくなんて所詮無理な話で、すでに炎天下のせいで体力が消耗されて体がふらつく。 私がこんな状態なのに3人はまだまだ元気で…… 丁度、私のディフェンスが誰もいなくなり蓮から速攻のパスをもらい、私はゴールを狙った。 シュッ 「やったー」 蓮のきれいなシュートには敵わないけど私の打ったシュートは見事入り、両手を上げ私はガッツポーズをする。 「きれいなシュートだったよ」 蓮が褒めてくれるから嬉しくてでも恥ずかしくて照れ笑いをする。 「やっぱりマネージャーじゃなかったんだね」 「もお、信じてなかったんだー」 私が蓮の胸を叩くと両手首を捕まれ一瞬真顔になって、 「目に汗入る」 艶っぽい指先が額から流れる私の汗をそっと拭ってくれて、胸がキュンと騒ぐ。 「おいこら!また人前でいちゃつきやがって!」 「まあまあ、康介。蓮と井上さんはいつもこうなんだよ」 と、松田さんが割って入り興奮している康介さんを落ち着かせた。
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