27章

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蓮はまだ残業で私が先にマンションに帰って来た。 「ただいま……」 蓮は帰っていないのにぼそぼそと呟くように声を出して玄関を開ける。 「ふぅ」 私も少しは残業したんだけど…… 桐谷課長に 『もう今日は帰っていいぞ』 って言われてしまった。 まだ電車だってあるのに。 帰り際に蓮をチラ見したけど…… はあ……やっぱり見てくれず。 前屈みで肩を落とし、しょんぼりしてオフィスを出てきた。 バックを放り投げて、ポケットから携帯を取り出して絨毯に転がした。 ソファに全体重を沈めると軋む音がして、いつも蓮が座る定位置を見た。 笑い声がないこの部屋は静かすぎてひっそりしていて、時計の秒針しか聞こえない。 隣に蓮がいないだけでこんなにも寂しい。 今日一日ちょっと無視されて…… 仕事をしていても蓮が気になって気になって、何度も何度も視線を送って。 挙げ句の果てにはミスばっかりして桐谷課長に怒られて。 まだ怒ってるのかな…… また隙があり過ぎるって言うんだろうな。 でも桐谷課長が勝手に触ってきたんだよ。避けようって思う前に突然のことで…… あーあ。もお…… ガチャッ 蓮だ。蓮が帰って来た! 私は寄り掛かっていたソファから背中を離し、放り投げていたバックを寄せて、携帯をテーブルに置いた。 「……おかえりなさい」
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