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え……
おかえりって言ったのに……
蓮は私の方を見向きもせず、まるで私がここに存在していないかのように無視をしてそのまま寝室へ入って行った。
追いかけたいと思うのに足が前に進まず、呆然と立ち竦む。
やっぱり……
怒ってるんだ。
だったら……怒ってくれればいいのに。無視されるぐらいならいっそ、怒られた方がまだましだ。
そわそわしながら待つこと30分。
私は待ちくたびれて、蓮のいる寝室へ向かう決心をして、音を立てずにそっとドアを開けた。
「……」
真っ暗な部屋のベットに蓮が横たわっていて……
すっーと寝息を立てて眠っていた。
「はあ……」
安堵のため息を溢した私は力が抜けてその場に座り込む。
ずっとドキドキしながら出てくるのを待っていたのに、本人は気持ち良さそうに眠っている。
「なーんだ。寝てたんだ」
まさかの展開に私は苦笑いをした。
つま先歩きでベットに近寄り床に座って眠る蓮を眺める。
「蓮……疲れてるんだね」
私が傍にいても起きる気配がない。
リビングからの明かりだけで寝室は照らされて、蓮が寝ているから明かりを灯すのはやめて……
私は腕をベットに乗せてその上に顔を伏せて……蓮の寝顔を見ながらいつの間にか眠ってしまっていた。
「バカ美優」
目を覚ませば床に座ったまま美優は寝ていた。
「ごめん……」
俺のわがままに付き合わせて、
「ほんとにごめん」
俺は美優の頭をそっと撫でた。
「ん……蓮……」
目をごしごしと擦って少し遠くを見て、思い出したかのように
「蓮……」
と、寝起きの掠れた声で俺の名前を呼んだ。
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