27章

7/9
前へ
/549ページ
次へ
「蓮……怒ってる?」 じっと私を見つめたまま蓮は何も言ってくれない。 強い蓮の視線にじんわりと私の視界は揺れる。 鼻の奥が痛くて息を止めて堪えると…… 「ごめん」 「えっ?」 「俺、朝の桐谷の行動に腹が立って……」 私は続きを言ってくれるのを蓮の瞳を見て黙って待った。 「おかえりなさいって言ってくれたのに無視して……」 「うん」 「ふて腐れて一人で寝て……」 「うん」 「美優は悪くないのに……」 「うん」 「八つ当たりして……ごめん」 蓮の気持ちが私の心に浸透していく。 、胸がギュッって痛くなって…… 蓮が恋しくて、愛しくて、私は包み込むように優しく蓮を抱き締めた。 嗅ぎ慣れた蓮の臭い。 やっぱり落ち着く。 「もういいの……」 さっきまでのモヤモヤは蓮からの言葉でどっかに飛んでいっちゃって。 何をされても何を言われても蓮への想いが変わるはずがなく。 「美優を誰にも触れられたくないって思う俺って変?」 「ううん。変じゃないよ」 「俺……美優のことになると前が見えなくなる。自分だけのモノにしたくなる」 蓮は私の腕を払い……逞しい腕に今度は私が抱き締められた。 それは私も同じ。 やきもちも妬くし、独占欲もあるし、前も見えなくなるし、八つ当たりもする。 それは好きと思うからの行動で蓮だけじゃない。 「私も蓮と同じ……だからそんなこと言わないで」 好きだから、愛しているから…… 自分の意思とは反対に体が勝手に動いちゃうんだよ。
/549ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23659人が本棚に入れています
本棚に追加