27章

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蓮の胸は広くて暖かい。 私を抱きしめる腕は見た目よりがっしりしていて、その腕が小柄な私を優しく包む。 そしていつも頭を撫でてくれる大きな掌。 何度撫でられたかわからない。 子供みたいだけど、蓮に撫でられると大丈夫だよ、そう言ってくれてるような気がして安心する。 「美優」 そう名前を呼ばれるたびに心臓が縮こまってドキッとする。 「美優」 「うん?なーに?」 胸元から顔を離し私の頭の上にある蓮を見れば、澄んだ瞳と目が合って…… 何も言わない蓮を不思議に思い首を傾けると…… 「やっぱりなんでもない」 そう言って目を逸らすから、 「言いたいことあるんでしょ。隠さないで言って」 「ほんとに何も」 「気になるよ。すんごく気になる」 蓮は口を結んでなかなか言ってくれない。でも頬を少しだけ緩めて、 「……キスしたい」 そっぽを向いてぽつり呟くように小さな声で蓮は言った。 「して……キス」 自分でも言っておきながら恥ずかしくて頬を紅くして言えば、すぐに蓮の掌によって頬を挟まれて…… 綺麗な瞳が私を捕らえてドキドキと鼓動が速くなる。 ゆっくり、焦らすように蓮の整った顔が近付き、鼻先が触れた瞬間、私は瞼を閉じた。 フワッと触れるだけのキス。蓮の唇の暖かさが伝わる。 一度唇から離れると私と蓮の視線がぶつかり…… 同意なんてしなくても唇は再び重なって。 蓮の掌によって何度も角度を変えられて生温かい舌が絡み合う。 私が甘い吐息を漏らすたび…… 蓮は私を攻め込んだ。
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