28章

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寒くなってきたな…… そう思っていたら木から葉がなくなり道路の隅っこには落ち葉が貯まっていた。 カレンダーは11月。 あと一枚カレンダーを捲ると師走となる。 「ねぇ、ねぇ、神堂部長のあの噂聞いた?」 神堂部長って……蓮のことだよね? 私はトイレの個室から出ようと思ったら、手を洗っているのか女子社員達の会話が聞こえてきた。 盗み聞きになっちゃうけど私はここから出ようとはしなかった。 「神堂部長がさ……になるって」 「えっーそれほんと?」 水の流れる音でなかなか聞き取れない。 私はドアに耳を付け、向こう側にいる女子社員達の声をなんとか聞こうとしてドアにへばりついた。 「それほんとなの?」 「噂だからどうだろうね」 肝心な所が聞こえない。 噂?蓮の噂なんてあったかな? 「それって誰から聞いたの?」 「うーん……誰だっけ?」 「あは、やっぱりそれ嘘だよ」 笑いながら女子社員達は出て行って、私も個室から出た。 手を洗いながらさっきの噂と言っていた内容を思い出してみる。 蓮のことを言っていたのは間違いない。神堂部長って聞こえたから…… 二人いたのかな……顔は見ていないけど……どこの課の人だろう。 「どんな噂なんだろ?」 トイレから出てオフィスに戻るまでもずっと女子社員達の話が気になって。 そのことばかり考えていたせいで前から歩いて来た人なんて気付かなくて…… 「いてぇ」 「す、すいません。大丈夫ですか」 相手の肩にぶつかってしまい持っていたファイルが床に散らばってしまった。 私は慌ててしゃがみファイルを取って、もう一度謝った。 「申し訳ございませんでした」 と、言って顔を見たら…… 「おっ!井上」
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