28章

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いつもの駐車場で待ち合わせをして私は今、蓮の車に乗っていた。 どうしても気になって仕方がない女子社員の噂を蓮に聞いてみることにした。 「あのね、蓮」 「うん?」 ハンドルを握ったまま蓮はちらっと私を見て前を向いた。 「今日トイレで蓮の噂話をしている人がいたの」 「俺のこと?なんだって?」 「それが……大事な所が聞こえなくて」 「それって噂話なの?」 「うん、だって神堂部長って言ってたもん」 蓮はフッと笑って、 「どうせくだらないことだよ」 「……そうなのかな」 でも相手の人……凄く驚いていた気がする。 「だって俺も聞いたことないしね」 「うん……」 蓮が言うんだから……さっきの話は私の聞き違いなのかもしれない。 でもなんか胸の奥で引っ掛かってるんだ。 「気にしない方がいいね」 って蓮はあっさり言ってウインカーを右に出してハンドルを回す。 横目で蓮の顔を伺ってもいつもと変わらない面立ちで…… やっぱり私の気のせいなのかもしれない。 助手席の窓から流れる街並みを見つめながら、燻る気持ちを消そうと私はラジオに耳を傾けた。 でも…… 蓮が一瞬、眉を上げて驚きを隠したことに…… 私はまったく気付いていなかった。
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