28章

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さっきの桐谷課長…… ちょっと様子がおかしかったな。 何を知ってるんだろう?あの話ってなんのこと? 謎は深まる一方でまた胸の奥がモヤモヤしてしまう。 あれ?蓮がいない。 いつもの窓際を見ても蓮のデスクは無人で…… さっきまでそこに座っていたのに。 「梨花、神堂部長は?」 キーボードを打ちながら、梨花は視線を蓮のデスクへ移し、 「あれ?いない?さっきまで座ってたよね」 「うん」 最近、姿を消すことが多い。それもちょこちょこいなくなる。 あちこちの課に用事があるのはわかっているけど…… 蓮の行動に違和感を持つ私の方が変なのかな。 こんなんじゃ仕事にならない。 私は両頬をピシッと叩いて気合いを入れてパソコンに目を向けた。 「美優は今日何食べるの?」 社員食堂へ向かう廊下を梨花と二人で歩く。 少し遅めに入った食堂はすでに混雑していて、食券売り場は長い列を作っていた。 「混んでるね」 「今日雨だからみんな考えることは一緒ってことね」 雨の日は濡れるのが嫌で外に出たくない人達が食堂を利用する。だからいつもより人が溢れている。 「私何食べよっかな」 まだ私達の前に二人いるのに梨花は隙間から食券販売機を覗く。 「あっ!ラーメンもう売り切れだよ」 悔しそうにまたキョロキョロと、人と人の隙間から見ている。 「フフッ、梨花落ち着きなよ」 「だって寒いからラーメン食べたかったのにさ」 口を尖らせてブツブツともんくを言いながら、切り替えの早い梨花はもう次の食券の狙いを定めている。 「あ、神堂部長だよ」 後ろにいた女子社員の声に思わず反応して後ろへ振り向く。 蓮……顔色が悪いよ。
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