29章

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私の頭の中は3日後のクリスマスをどんなシチュエーションにしようかと、そればかり考えていて…… 去年の苦いクリスマスをどうにか挽回するために思い出に残るクリスマスにしようと計画を練っていた。 私の疑問に思っていた蓮の噂やあの日の食堂で様子が変だった蓮のことも何もなく過ごしていた。 蓮が残業だと聞き、私は街へ足を運んでいた。 今年のクリスマスプレゼント。 これが今日の目的。去年はキーケースだった。今年はもう決めている。 マフラーと手袋。 寒がりの蓮は必ず身に付けているから、この冬、肌身離さず使ってほしいと思って思いついた。 プラプラとメンズショップをさ迷いながら、気に入った物を探す。 この時期、当たり前のように売っているけど…… 蓮に似合いそうな物に巡り会えない。 「参ったな。たくさん種類がありすぎちゃうよ」 何度も同じ所を素通りしながら歩いていると、 「何かお探しですか?」 と男性の店員さんに声を掛けられた。 「マフラーと手袋を探してて……」 「奥の方にもまだありますがどうですか?」 「……はい」 ショップにいるだけあって、着こなし方が上手なイケメン店員さんに案内されて店内に入って行った。 「うわっ」 店先だけしか見ていなかったから、まだこんなに種類あったんだ。 「彼氏にですか?」 と聞かれて、ちょっと照れ臭くて頬を赤らめて、 「はい」 と、答えると 「どういった物をお探しで?」 どういった物……そう言われるとどう説明していいのか悩んでしまう。 「探している色とかありますか?」 「黒……黒です」 ニコッと笑った店員さんはすぐにいろんな柄のマフラーを探しだし、 「あっ」 細かいチェック柄のマフラーを一目見て、蓮に似合いそうと思った。 「これ素敵ですね」 手に取って蓮が付けたイメージを想像してみる。 うん、うん。絶対似合う。
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