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きっと一緒に行こうって笑顔で言ってくれると思っていた。
だってずっと一緒に過ごしてきたんだよ。
これからもこの先もずっと、ずっと一緒じゃなかったの……?
私が泣くといつも優しく撫でてくれる蓮の手が頭の上にはなかった。
「美優」
真剣な面持ちの蓮が真っ直ぐ私を見つめる。
蓮が何を言おうとしているのか怖くて目をギュッと瞑って下を向いた。
「うちの会社は事務員の海外赴任は認めていない」
知ってる。だから……私は仕事を辞めてついていきたいって思った。
「ニューヨークに行ったら毎日誰もいない知らない街に美優一人でいることになる」
「蓮がいるよ。蓮が仕事終わったら帰ってくる」
「あっちに行ったら、忙しくてほとんど会社で寝泊まりになる。美優がいれば帰りたいって思ってしまう。だから……」
蓮にとって私は……足手まといってことなんだね。
傍で蓮を見守ることさえ許してくれないの?
「私が邪魔なんでしょ!」
ほんとはこんなこと言うつもりなんてないのに……
私の気持ちをわかってくれない蓮に言葉をぶつけていた。
「そうじゃないよ、美優」
「蓮は……2週間後に……いなくなっちゃうんだよ」
涙は止まることを知らなくて幾度も流れいく。
蓮がいなくなるなんて……
私の前からいなくなるなんて……
考えてもいなかった。
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