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何秒見つめ合っただろう。
周りの人達なんて目に入らなくて、時間が止まったかのように、私も神堂部長も目を反らさずにいた。
「美優、美優」
「あっ……」
先に視線を反らしたのは私で、梨花に呼ばれてハッとしてしまった。
「なんだか見てて恥ずかしくなったんだけど……」
「あ、うん。ごめん」
梨花に見られていたなんて恥ずかしくて顔が熱くなる。
「昼休みに二人の間に何があったのか詳しく教えてもらうからね」
フフッと言って梨花は笑った。
私はまたちらっと神堂部長を見たけど、もう仕事に取り掛かっていてこちらを見ることはなかった。
もしかしたら井上は今日、会社を休むかもしれないと思ったけど、ちゃんと来ていてほっとした。
俺と目を合わすのは嫌だろうなと思っていたのに偶然に井上がこっちを見た。
誰が見ていても構わない。
そう思ってしまった。
だから真っ直ぐ俺は井上を見つめた。
ここには二人しかいない、そんな錯覚になってトクントクンと脈を打つ音が体から伝ってきた。
井上を見て、やっぱり俺はこいつが好きだと確信した。
井上を誰にも渡したくない。
誰にも触れさせたくない。
独占欲が俺を支配していった。
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