29章

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「私は……これから……どうしたら……いいの……」 顔をぐちゃぐちゃにして泣く私の質問に蓮は黙ったままで…… 今、蓮がどんな顔をしているのか見てしまったら切なくなってしまう。 だからずっと顔を伏せていた。 すると私の頬に蓮の手が伸びてきて…… 私の頬を優しく挟んだ。 眉を下げて悲しげな表情の蓮と目が合うと…… 「俺がいない間、寂しい思いをさせてしまうなら……」 「やだ。別れない」 私は蓮の胸に飛び込んでしがみついた。いつも嗅ぎなれたこの蓮の匂いを失いたくない。 「ニューヨークに連れていってくれないなら……ここで蓮を待たせて……」 「美優……」 私の腕を離そうとするけど、私は何度も首を横に振って蓮に回っている腕を強くした。 「いやだよ。蓮がいないなんてやだ」 わがままなのかな。 蓮を困らせてるのかな。 でも……何があっても別れたくないの。 離れるだけでも寂しいのに別れてしまったら私…… もう蓮との繋がりがなくなってしまうなんて嫌なの。 「美優。3年だよ。3年も経てば人の心なんて変わる」 「私は変わらない。絶対変わらない」 「会いたいと思ってもすぐ会える距離じゃないんだよ」 「わかっ……てる」 鼻を啜りながら蓮にわかってもらいたくて、私の想いが通じてほしくて……強がってみせた。 どれだけ遠くても、どれだけ長い間離れてても、蓮と繋がっているなら耐えてみせるんだ。 「美優……」 お願いだからそんなか細く掠れた声で名前を呼ばないで…… どんなに泣いても、どんなに強がっても、私の想いは蓮に届かなかった。 「別れよう」 どう……して……。 どうしてわかってくれないの……蓮。
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