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あれから神堂部長は何も言ってこなかった。
それが私には安らぎで、いつもの日常に戻っていた。
でもたまに神堂部長を見つめてしまう自分がいて、そのたびにキスを思い出し、あれは事故、あれは意味のないキス、と自分に言い聞かせていた。
カレンダーは夏になり、長袖から半袖に衣替えとなり、これから夏本番という時に偶然という出来事が起こった。
社員食堂で梨花とオムライスを頬張りながら海に行きたいね、という話に花が咲いていた。
「なんかうるさくない?」
梨花がスプーンを片手に周りを見ると神堂部長と松田さんが入って来て、それを見た女性社員が騒いでいたのだ。
「やっぱりカッコイイ」
「彼女いるのかな?」
そんな声がちらほら聞こえてきた。
確かにあの二人からはオーラを感じる。
芸能界でも通じる容姿だ。
あ……
一瞬だけど神堂部長と視線が絡み合う。
でもそれはほんとに一瞬で、すぐに目を反らされてしまった。
ただ目を反らされただけなのに心臓がギュッて痛い。
私は掌を握って心臓に手を当てた。
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