3章

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あれから神堂部長は何も言ってこなかった。 それが私には安らぎで、いつもの日常に戻っていた。 でもたまに神堂部長を見つめてしまう自分がいて、そのたびにキスを思い出し、あれは事故、あれは意味のないキス、と自分に言い聞かせていた。 カレンダーは夏になり、長袖から半袖に衣替えとなり、これから夏本番という時に偶然という出来事が起こった。 社員食堂で梨花とオムライスを頬張りながら海に行きたいね、という話に花が咲いていた。 「なんかうるさくない?」 梨花がスプーンを片手に周りを見ると神堂部長と松田さんが入って来て、それを見た女性社員が騒いでいたのだ。 「やっぱりカッコイイ」 「彼女いるのかな?」 そんな声がちらほら聞こえてきた。 確かにあの二人からはオーラを感じる。 芸能界でも通じる容姿だ。 あ…… 一瞬だけど神堂部長と視線が絡み合う。 でもそれはほんとに一瞬で、すぐに目を反らされてしまった。 ただ目を反らされただけなのに心臓がギュッて痛い。 私は掌を握って心臓に手を当てた。
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