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「美優?」
背後から男の人が私の名前を呼んだ。
この会社で名字以外で私を呼ぶ人はいなくて、不思議そうな顔で返事をした。
「はい?え?凌太?」
懐かしい姿が後ろに立っていて、突然の出来事に口をぽかんと開けたままだった。
2年ぶりに見た凌太は顔付きが男らしくなり、別れた時とは違う髪型で……
でも笑顔は変わっていなくて、少し痩せたみたい。
学生ではなく見たからに男の人になっていて、別れてから長い月日が経ったことを思い知る。
「どうしてここに?」
「営業で来てさ、社員食堂のご飯がおいしいって言われたから来てみたんだ」
「そっか……」
「美優がここにいるなんて思わなかったよ」
「短大卒業して入社したの」
「なんか雰囲気変わったな」
「そうかな」
優しく笑う所はぜんぜん変わっていない。
わがままも強がりもどんな時も笑顔で私を支えてくれた。
そんな凌太が大好きでずっと一緒にいたいって思っていた。
「じゃあ、俺行くね」
「うん」
あんなに一緒にいたのに別れてしまえば他人で、過去に何もなかったように普通にしゃべっていた。
それが少し寂しく思うのは私だけかな。
一時は付き合っていたのに離れてしまえばこんなものなのかな。
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