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食堂の奥へ行ってしまった凌太の背中を私は目で追い掛けていた。
そして……
凌太を見ていた私を神堂部長が、切なげな視線で見ていたなんて、全く気付かなかった。
夜、梨花に誘われていつもの居酒屋に来ていた。
ここに来たのはあの日、神堂部長が私を介抱してくれた日以来。
そして酔っ払いの姿を店員に見られていた訳で……
ちょっと恥ずかしながらも、またここに来てしまった。
「美優、何飲む?」
一杯だけならいいよね?
そのぐらいで酔うことなんてないし、一杯でやめればいんだもんね。
「ビール」
「すいませーん、ビール2つ」
おしぼりで手を拭いていた私はぼんやりしながら、さっき会った凌太のことを思い出していた。
「まさかあそこで凌太に会うなんてね」
ちょっと気まずそうに苦笑いで梨花が口を開いた。
「うん。私もびっくりした」
今まで一回も会ったことなかったのに、まさか自分の会社、しかも社員食堂で会うなんてね。
「変わってないね、凌太」
「うん」
私達は凌太と高校で一緒になり、最初から最後まで梨花は私と凌太のことを知っている。
私が凌太とケンカした時も、別れた時もいつも私の側で梨花は励ましてくれていた。
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