3章

4/17
前へ
/549ページ
次へ
食堂の奥へ行ってしまった凌太の背中を私は目で追い掛けていた。 そして…… 凌太を見ていた私を神堂部長が、切なげな視線で見ていたなんて、全く気付かなかった。 夜、梨花に誘われていつもの居酒屋に来ていた。 ここに来たのはあの日、神堂部長が私を介抱してくれた日以来。 そして酔っ払いの姿を店員に見られていた訳で…… ちょっと恥ずかしながらも、またここに来てしまった。 「美優、何飲む?」 一杯だけならいいよね? そのぐらいで酔うことなんてないし、一杯でやめればいんだもんね。 「ビール」 「すいませーん、ビール2つ」 おしぼりで手を拭いていた私はぼんやりしながら、さっき会った凌太のことを思い出していた。 「まさかあそこで凌太に会うなんてね」 ちょっと気まずそうに苦笑いで梨花が口を開いた。 「うん。私もびっくりした」 今まで一回も会ったことなかったのに、まさか自分の会社、しかも社員食堂で会うなんてね。 「変わってないね、凌太」 「うん」 私達は凌太と高校で一緒になり、最初から最後まで梨花は私と凌太のことを知っている。 私が凌太とケンカした時も、別れた時もいつも私の側で梨花は励ましてくれていた。
/549ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23658人が本棚に入れています
本棚に追加