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小さな個室のため、隣に座る神堂部長との距離が近すぎて、ちょっと動いただけで、触れてしまいそう。
でも向かいに座られて、目なんて合ったら、それはそれで困るので、隣にいる方がまだいい。
「美優ほら飲んで飲んで」
さっき届いた二杯目のビールはまだ飲んでいなくて、泡がほとんどなくなっていた。
私は窮屈な腕をテーブルへ出し、ゴクゴクとビールを飲み込んだ。
「トイレ出たらさ。偶然に神堂部長と松田さんに会ってね。私、強引に一緒に飲みましょうって誘ったの」
なるほどね、そういうことなんだ。
私と神堂部長のことを知っておきながらお節介の梨花が連れて来たってことね。
「邪魔しちゃ悪いって思ったんだけどね。ごめんね、井上さん」
「あ、いいえ」
「神堂部長もいやでした~?」
梨花、神堂部長にフラないでよ。
「いや、別に」
神堂部長はさっきから何も喋らず、つまらそうな顔をして、梨花と松田さんの話を聞いているだけ。
そんなに私といるのがいや?
そう考えていると鼻の奥がツーンと痛くなり、私は視線を落とし俯いた。
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