3章

11/17
前へ
/549ページ
次へ
「どうして資料室で私にキスしたんですかぁ?」 酔っているせいか溜まっていた気持ちが口から出てしまっていた。 潤ませた目で壁に寄り掛かりながら、私は神堂部長に言葉をぶつけていた。 「私、神堂部長に恨まれるようなことしましたぁ?」 梨花はあぁ、って顔がひきつって苦笑いし、松田さんは驚いて 「おい、蓮。お前資料室でって……」 「……」 「松田さんひどくないですか?いきなりキスですよぉ」 もう限界。 神堂部長に関わってから溜め込んできた感情が、溢れるほど積もってしまって、私は涙をポロポロ流しながら言っていた。 なんだよ。 酔った勢いでこいつらの前で言うのかよ。 春樹なんて唖然とした顔してるよ。 鈴木…… こいつは俺の気持ちをたぶん知っている。 井上がいろんなことを話しているのは予想つくけど、鋭い鈴木は俺が井上を好きだと気付いているはず。 「神堂部長、白状したらどうですか?美優は鈍感だから気付きませんよ」 白状って何? 梨花はニヤニヤしながらビールを飲むだけで…… 「蓮、素直になったら?」 素直にって何? みんな訳のわからないことばかり言って、私だけ蚊帳の外。 「あーお前らうるさい」 神堂部長は照れているのか耳を赤くして顔を背け、頭を掻いた。 「なんなんですかぁ?白状すれとか素直になれとか。もう私を振り回すのやめて下さい!」 プチっと何かが切れる音と共に私は大声を上げ、言ってしまった言葉で寂しげな顔をした神堂部長を見逃さなかった。
/549ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23658人が本棚に入れています
本棚に追加