3章

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「行くぞ」 「え?」 神堂部長は急に立ち上がり、私の手首を掴んだ。 掴まれた手首をじっと眺めて、そして神堂部長に視線を移すと ちゃんと私を見てくれている。 無理矢理立ち上がされ、掴まれた手首が強く握られて、そこだけが火照る。 「ちょ、ちょっと待って下さい。どこ行くんですか?」 「いいから行くぞ」 「あ、お金」 「今日はこいつらのおごり」 「え、でも」 個室を出る前に梨花と松田さんを見ると 「梨花、頑張れ」 「今日はおごるよ。蓮を頼むね」 って笑っている二人がいて、甘えちゃっていいのかなって戸惑っていた。 「早く」 グイっと引っ張られて、まだ酔いが冷めていない私は足がおぼつかなくて、転ぶ寸前で神堂部長が私の腰に腕を回してくれた。 「だから飲みすぎなんだって」 「は、はい、すいません」 普段見ることがない優しい笑顔にキュンとしてしまった。
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