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美優……ごめん。
鈴木の後に続いて、美優があいさつをしてきたのに。
目が合ったけどすぐに反らしてしまった。
ほんとは近寄って声を掛けたかった。
でも何十人といる他の社員の目が気になり、近寄ることも優しく声を掛けることもできなかった。
切なげに視線を落とした美優の顔が曇っていた。
美優の悲しい顔を見て、俺は自分の立場をこの時初めて恨んだ。
パソコン越しから窓際に座る蓮が見えて、電話に出たり、社員が持ってくる書類を確認したり忙しそう。
私を見てくれる余裕なんてないよね。
だめだね、私。
わがままだ。
こんなんじゃ嫌われちゃう。
私はブルブルと顔を横に振り、パソコンの画面に集中した。
昼休みはいつものように梨花と社員食堂に行き、みんなから離れた席に座っていた。
「美優、大丈夫?」
「うん?何が?」
「なんか思い詰めてたから」
「……うん」
「神堂部長も辛いと思うよ」
「あ……うん」
梨花はきっと私の気持ちわかってるんだ。
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