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車に乗って、蓮の運転する姿を見ていた。
ハンドルを握る長い指先に整った横顔。
どこを見ても完璧で、対向車が来るたびに浴びるライトの光に映し出される蓮の顔つきが、私をドキドキさせていた。
こんな人が私でいいのかなって思ってしまう。
「こっちでいい?」
私の降りる駅の近くまで来ていて、車だとここから7、8分で私のマンションに着く。
「あ、はい」
車の時計を見るとまだ9時で、もうお別れかと思うと、なんだか急に切なくなってきた。
明日また会社で会える。
でも会社ではこんな風にしゃべったりできない。
物足りないと思ってしまうのは私だけなのかな。
もっともっと一緒にいたいって思うのは欲張りなのかな。
こんなことを言ってしまったら、ウザイ女って思われるのかな。
嫌われたくないと思えば思うほど臆病になる。
「美優どこ?」
考え込んでいたらもうマンションが見えていて、
「あのマンションです」
車はゆっくりと減速して玄関前に到着してしまった。
私は足元に置いていたバックを持ち、ドアを開けようとした。
「ここに着くまで何考えてた?」
「え?」
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