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「何も考えてない……」
「美優」
シートベルトを取った蓮が体を私の方へ向け、真剣な顔で私に言った。
「言いたいことがあるなら言って。我慢したり溜め込んだりしないで。俺は美優の思っていることを知りたいし、わがままだって愚痴だってなんだって受け止める。だから……自分の思っている気持ちを俺にちゃんと言ってほしい」
「蓮……」
ジワッと目に涙が滲んでいく。
どうしてこの人は私の気持ちを読んでしまうんだろう。
何も言わなくても一瞬で私の心を見抜いてしまう。
こうやって入社式から私を見ていたの?
「何か言いたいことあるんだろ?」
溢れ落ちる涙を蓮は優しく拭ってくれて、そんな仕草にも胸がギュッと痛くなる。
「私……まだ蓮と……一緒にいたい」
愛しそうな目でフッと口角を上げて優しく笑った蓮は
「よく言えました」
と、大きな掌で私の頭をクシャと撫でてくれた。
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