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家の人はみんな眠ってしまっている。
不気味に静まりかえった家から、どこに行こうかと思って道路の方を見たら、ぞくり、と寒気が走った。
田んぼと向こう側の山一面が、緑色に光って、ちかちかしていた。
もちろん、超田舎だったから蛍くらいはいた。
けど、精々二、三匹見つかれば上等って感じの場所だった。
なのに、山を丸ごと光らせてるんじゃないか、ってくらいにちかちかしてる。
どう見たって普通じゃない。
あれだけ光っていた星も見えなくて、空は墨を洗った水みたいに真っ黒。
慌てて懐中電灯をつけようとスイッチを押し込んだのに、カチンカチンと音がするだけで全然つかない。
さっきまではついてたのに……!
向こう側の光は、どんどんこちら側に迫ってきているように見えた。
思い返すととても幻想的な雰囲気なんだけど、当時の僕の頭はパニック状態。
光に見つからないように裏手から家に入ろうと思い、右側の神様の裏から井戸の脇を通って、土手を上がる。
半ズボンにビーチサンダルで、草むらを歩くのは楽じゃない。
もともと怪我はよくしていたけど、新しい傷が増えているのが、ぼんやりとした緑色の光の中でよく見えた。
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