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土手から裏口への道中、見慣れたまだら模様がふわふわと動いていた。
ねこまたさんはいつも同じ場所で寝ている。
朝も昼も、夜中だって、ここから動いたりはしない。
ただ時々、僕からは見えなくなることがあるだけで。
ねこまたさんも化け物ではあるけれど、そのときの僕にとっては、得体の知れない光の大群よりずっと安心できた。
「ねこまたさんっ」
「騒々しい。大声を出すでない」
土手と竹林の境目辺り。ねこまたさんの特等席に僕も座り込む。
母屋とボロ屋の境目から、向こう側の山がよく見える。
ねこまたさんは、ふああと大きくあくびをして、やれやれと体を起こした。
「山が、光ってるの」
「山だって光りたくなる時もあろうて」
「あれは、悪いもの?」
「小娘、お前はどう思う」
ねこまたさんは絵本の中の猫みたいに、にたりと歯を見せて笑う。
これは、僕をからかうためときの、ねこまたさんの癖だった。
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