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向こうの山はぼんやりと光って、ふっと消えて、また光る。
何だか悲しい光だった。
怖いけれど、悪い感じはしないから、『良いものだと思う』と答えた。
「そう思うならば、本の一冊でも読むといい。アレも淋しがっておるからな」
ねこまたさんはそう言って、また丸まってしまう。
何で蛍と本が結びつくのかはわからなかったけど、光が悲しそうなのは多分、淋しいからなんだろうな、と思った。
その頃はまだ、『蛍雪の功』なんて言葉を知らなかったから。
あの夏の出来事以来、僕はすっかり本の虫になってしまった。
今でも、この季節になると、いつも以上に本を読みたくなる。
そして、読み終わった本を閉じて思うんだ。
あの光達が、淋しい思いをしていないといいな、と。
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