出会い

5/7
前へ
/29ページ
次へ
二本の尻尾が別々の生き物みたいにうねうねしてる。 (オバケだ!) 命の危険を感じたというよりは、好奇心の方が上で、そっと大きな猫に近づく。 本物かどうか確かめるために触ろうとしたら、大きな猫の目が開いた。 慌てて手を引っ込める。 本気で食われると思って目を閉じたのに、いつまでも食われなくて、恐る恐る目を開けてみると、やっぱり大きな猫がいた。 猫特有の前足を出して尻尾を持ち上げる感じの伸びをして、またころんと丸まった。 「お前は、ここの子か」 聞こえたのは、おじいさん一歩手前のおじさんみたいな声。 でも、裏の土手には僕と大きな猫しかいない。 竹林の上を見上げても、余所の家の方には人影は見えなかった。 「口が利けぬのか」 大きな猫の口がもごもご動いてるのを見て、トトロのネコバスを想像した。 ネコバスが喋ってるんだと思うと、意外と怖くない。 まあ実際のネコバスは喋らないんだけどさ。 「ねこさんは、オバケ?」 「ねこまたじゃ」 「ねこまたさん?」 「ああ、ねこまたじゃ」 そういって大きな猫はゴロゴロと喉を鳴らす。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加