1.天は彼女に五物を与えてしまった

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~~~♪ 聞き慣れたメロディが流れ始める。 最近流行りの女性2人組本格派ロックバンドの曲だ。 あまり女性ボーカルの曲を聴かない俺にもすぐわかるくらい特徴的なギターソロで始まるその曲は、色々な意味で今の世の中を騒がせているそのバンドが先月出したばかりの新曲である。 そして俺と反対側の椅子には女の子が一人。 風が吹けば優雅になびくであろう艶のある長い黒髪を今は少しも揺らすことなく、緊張した面持ちのままその手にマイクを握りしめている。 また透き通るような黒色の大きな目はカラオケマシンのモニターを凝視しており、歌い出しを待ち構えている。 彼女の名前は御池奈乃(みいけなの)、実は俺の彼女だったりする。 ちなみに完全に自慢だが 容姿端麗 品行方正 成績優秀 公明正大 純情可憐 生徒会長 な大和撫子だ。 え、6つ目はおかしいって? 納得いかない君は放課後体育館裏に集合だ。 一晩かけてその考えが間違いであると頭に叩き込まれることだろう。 コホン、なにか雑念が紛れたが気にせず話を元に戻そう。 そんな彼女は当然、学校でも注目の対象である。 特にクラスのアホども(俺の親友を含む、というかそいつが主犯)は、「天は二物どころか五物をお与えになったのだ!!」とかわめきながら変な信仰団体ができそうなくらい(実際近いものができている)に常に鬱陶しい盛り上がりを見せている。 なお、その「五物」というのは先ほど自慢させてもらった彼女を表す四字熟語の最初の5つのことを指す。 だが俺にとってはそんなのは何も知らない奴らが勝手に幻想を抱いているだけにしか聞こえない。 なぜかというと俺は知っているからだーーーーー 天が彼女に与えた五物はひとつではなかったのだと…image=430371903.jpg
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