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するとその瞬間、青白い光が強さを増し教室一杯に広がる。
「うわっ?」
驚きカードを放り投げると、カードはまるで定位置に着くかの様に不自然に机の中心に舞い戻り、光の強さを更に増した。
「何だ? これ?」
黒一は後退り、この不自然な現象から逃げようとするが身体が動かない。立ったまま腰を抜かしたのか、それとも金縛りにあっているのか、黒一には知るよしもなくただ呆然と光が放たれるカードを見つめる事しか出来ずにいる。
「人間よ……」
黒一が呆然と立ち尽くしていると、カードから声が聞こえた。
「マジか? 幻聴まで聞こえ始めたぞ。こいつはマジでヤバい」
逃げたくても逃げられないこの状況に黒一は遂に焦り始める。冷や汗も止まらず、顔も青ざめてきていた。
カードの光が一瞬だけ前が見えなくなる程に輝き、そして―――そのカードから女神が降臨した。
銀髪で赤と白のスレンダーなドレスにも見える派手な衣装。現代ではまず有り得ない出で立ちをする女性がそこで宙に浮きながら出現したのだった。
「妾は破滅へと導く女神―――ルインである。人間、貴様は何者だ?」
鋭く突き刺さる眼光を黒一に向けて、ルインと名乗る女性は尋ねる。しかし、黒一は開いた口がふさがらず、目を点にしてルインを見ていた。
「何を立ち尽くしておるのだ。妾が尋ねたのだぞ? 早々に答えよ。貴様は何者だ?」
「いやお前が何者だよっ? 何だこれ? トリックか何かか? ドッキリにも程があるぞ? 仕掛人誰だし? そもそも原理もわからねえしっ?」
「仕掛人とは何だ? 貴様の名か?」
「んなわけねえだろ! 俺は遊天寺黒一……って普通に訳の分からねえ奴に名乗っちまった」
「なるほど、貴様の名は遊天寺黒一と言うのだな」
「ああそうだよ。とにかく俺は帰るんだから、このトリックみたいな金縛り紛いのもん解いてくれよ。まだ身体が動かねえのも意味が分からねえし」
「解いたら貴様はこの場から立ち去るのであろう? 貴様は妾を降臨した選ばれし者。妾の話を聞かねばならぬのだ」
「何勝手に決めてんだ! いいから解けよ! 解いて下さい! 解きやがれっ!」
黒一の叫び声も虚しくルインは金縛りを解くことはなかった。
「いやホントにすみません。話聞くんで解いて下さい」
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