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大迷路町のほぼ中心に位置する大迷路高校は放課後を迎えていた。
下校する者も居れば部活動に勤しむ者、役職に携わっている者も居れば―――待ってましたと言わんばかりに決闘(デュエル)をする者も居る。
世界最高峰のゲームにして今や究極の文化としても名高いデュエルモンスターズはこの大迷路高校でも例外になる事なく流行を博していた。
「こら待てっクロ! 今日と言う今日は許さないんだからねっ」
校舎内をポニーテールに束ねた髪を靡かせて女子生徒が一人の男子生徒を追いかける。
「待てと言われて待つ程お人好しじゃねえんだよ」
後ろを振り向きながらもスピードを落とす事なく走る男子生徒はおちゃらけた表情で女子生徒を馬鹿にした。
「いい加減にしろーっ!」
その馬鹿にした表情にムカついた女子生徒は走りながらも手早く履いている上履きを手にして―――男子生徒に投げつけた。
「ぐはっ!」
男子生徒の頭部にクリティカルヒットした上履きは女子生徒の前に落ち、女子生徒の前にはクリティカルヒットした上履きのダメージによって倒れる男子生徒が居る。
「上履き投げるとか卑怯だろ」
「卑怯で結構よ。さて、今日こそちゃんと部活に出てもらうからね」
「ふざけんな。俺は帰って惰眠を貪るんだ!」
「ふざけんな。授業中も貪ってたでしょ! いいから来るのっ!」
「痛っ、耳引っ張んなって」
耳を引っ張られながら男子生徒は女子生徒に、無理矢理部活動が行われている部室に連れていかれた。
この二人が所属する部活動―――決闘部は校舎から出て十歩程度歩いた部活棟にある。男子生徒はそこに至るまでの道程をずっと耳を引っ張られながら歩き、決闘部の部室に着いた。
「くそいてえ。普通校舎からここまで耳ひっぱるかなあ」
真っ赤になってしまった耳を擦りながら男子生徒はぼやく。
「今まで逃げ続けた罰ゲームよ」
そう言って女子生徒は何食わぬ顔をして部室の扉を開いた。
「君ヶ浜羽子、入ります」
決闘部の小さなしきたりとして部室に入る際には自分の名前を宣言しなければならない。
女子生徒、君ヶ浜 羽子(きみがはま はねこ)はしきたりを守りしっかり名前を宣言してから部室に入って行った。
「だるいなあ、ったく。遊天寺黒一、入ります」
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