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男子生徒、遊天寺 黒一(ゆうてんじ くろいち)もまためんどくさそうな顔をしつつもしきたりを守り部室に入って行く。
部室内は意外と広く、普通の教室と大差がない。しかも黒板やロッカー等もあり、ほとんど教室である。普通の教室と違う点と言えば机と椅子が四十セットないくらいだ。この部室にある机と椅子は教室の十分の一で、堂々と黒板の前に四角形を作って並べてある。
「遂に来たなクロ。てめえ今日こそ俺と決闘(デュエル)だ」
今この部室に居るのは机の上に座る男子生徒一人だけ。男子生徒は人差し指を黒一に向けて睨み付けている。金髪オールバックの髪型に三連ピアス。学ランの下には赤いTシャツと何処からどう見ても不良にしか見えなくい男子生徒だ。
「煉瓦はしつけえな。朝から何度断れば気が済むんだよ」
「断んなよっ! 決闘者(デュエリスト)だろ」
「いや違うよ。僕は健全なる高校生男児ですよ」
「あからさまな嘘付くなよっ! ここに何しに来てんだ!」
「いや無理矢理ですよ。そこにいらっしゃる羽子さんが僕の耳を引っ張ったわけですよ」
「ってか何で微妙によそよそしいんだよっ!」
「君みたいな野蛮な奴と一緒にされたくないからさ、てへ」
黒一は何故か舌を出して拳を軽く頭にぶつけて可愛い仕草をした。
「何で今この時、この瞬間にそのポーズなんだ?! 意味わかんねえよ! しかもキモいんだよ」
「おいおい、キモいとか超失礼だしっ」
「何一つ失礼じゃねえよっ! ってかてめえのその態度の方が失礼だろっ」
金髪不良の男子生徒―――小机 煉瓦(こづくえ れんが)は流石につっこみ疲れたらしく、少々息を切らしている。そんな姿を見て黒一は「やれやれ」と大きく溜め息を吐くと、煉瓦は再び声を張り上げようとする。
「いい加減にしろって。あんた達の漫才はもういいから」
痺れを切らした羽子が口を開き、二人の掛け合いを止めた。
「とりあえずクロも久々に部に顔出したんだから決闘(デュエル)しなさいよね」
「羽子がやればいいじゃん」
「御生憎様。私のデッキは調整中で、まだ戦える枚数揃ってないのよ」
「じゃ、俺も調整中ってことで―――」
いつの間にか手にしている上履きで羽子は黒一を叩く。
「いってえな! 上履きで叩くなよ、汚いだろ」
「クロには良い罰ゲームよ。ほら、煉瓦はもう準備万端じゃない」
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