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『君のお父上だよ!ぜひ、パパと呼んで…』
麗惺が、少しの間考えを巡らせている間に復活したらしい相手のふざけた戯言が耳に入る。
「電話を叩き切られたいんですか?」
麗惺は、雅司の言葉を遮る様にしてそう言葉をつむぐ。
『いやー!やめてっ!切らないでー!!』
麗惺の言葉に雅司は、勢い良く泣き叫びながらそう言った。
「そこまで泣き叫ばなくても…」
麗惺は、ここまで過剰に反応するとは思っていなかったため少し呆れたように溜息をこぼす。
『だって…10年ぶりだって言うのに麗惺の態度があんまり冷たいから…』
「…」
『その…皐月の件…遅くなってごめん…葬儀にも出席できなくて…』
「大丈夫です。母の葬儀はすべて滞りなく済ませましたから…あなたも忙しいと思いますし…」
麗惺は、雅司の酷く申し訳なさそうな言葉を遮る形でそう言葉を紡ぐ。
電話の向こうで雅司が苦しげに息を詰まらせたのがわかった。
恐らく、他人行儀に受け答えされる麗惺の言葉に胸を痛めているのだろう。
「…大丈夫です。あなたを責めているわけじゃありませんから…」
麗惺は、極力優しい声で雅司に向かってそう語りかけた。
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