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『え…?』
「俺ももう子供じゃありませんし、これからは一人でもやっていけます…だから、心配しないでください…」
麗惺は、穏やかな声音でそう言って机の上に飾られている母の写真に視線を向けた。
『…学校…確か、都内の公立高校に合格したんだったよね?』
雅司は、どこか寂しげな声で徐にそう声をあげる。
「?ええ…(なんでそんなことを知ってるんだろう?)」
『まずはお祝いを言わないとね。おめでとう…確か、俺の記憶が正しければ都内でも有数の名門校じゃなかったっけ?』
「ええ…そういう話です。一応、特待で合格しましたから学費は免除になってますし…そちらの方も心配しないでください」
『…あ、あのね?麗惺…』
雅司は、至極言い難そうにそう言葉を濁らす。
「?なんですか?」
『麗惺は、俺と皐月が離婚した理由を知ってるかい?』
「…いえ…ですが、俺や母のためだったということはわかっているつもりです」
麗惺は、優しく微笑みながらそう言葉を紡ぐ。
その声からも優しさが伝わり、雅司は、一瞬息を詰まらせた。
『…そう…ありがとう…実はね?皐月が死んだことで俺の遠い昔の爺さんの遺言状が効力持っちゃったんだ…』
「?遺言状…ですか?」
『うん…麗惺は、俺の実家のこと覚えてるかな?』
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