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十五分後。
「うん…シナリオも完璧…って…まだ叔父さんが来るまで三時間はあるんだけど…」
麗惺は、部屋に架かっている時計を見てそう呟くとため息をつく。
そんなとき誰かが応接室のドアをノックした。
「!はい!!」
麗惺は、行き成りのことに驚いたが冷静さを失わずにそう返事を返す。
しっかりと敬語なところは流石と言えるだろう。
「失礼いたします」
そう言って部屋に入ってきたのは明るい茶髪にくりくりの黒目の少し小柄な少年。
「?…」
麗惺は、その少年のいきなりの登場に訳がわからず首を傾げる。
「如月理事長よりお話は伺っております。如月の次期御当主さまの麗惺さまでございますね?」
少年の顔は確かに麗惺に向けられているがその瞳はけして麗惺を捕らえない。
「…(和茨叔父さん…)」
麗惺は、心の中で和茨に向かってため息を付くと少年の言葉にこくりと頷いた。
「理事長より学内の案内を申し付けられた山田雪也と申します」
少年は、何の感情も浮かんでいない顔で淡々とそう自己紹介をした。
そして、静かに一礼する。
しかし、麗惺にはわかった。
雪也の何も浮かんでいないその表情の下に確かな諦めと怯えがあるのを…。
「…山田くん?」
「どうぞ山田とお呼びください。如月様…」
「…でも、君も学生ですよね??」
麗惺は、そう言って少し苦笑する。
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