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「はい、私は奨学金制度でこの学園に通わせていただいている召使いの身ですので…」
雪也は、麗惺の言葉に一瞬だけ表情を歪めた。
しかし、その一瞬浮かんだ屈辱と嫌悪の表情はすぐになりを潜め先ほどと変わらない無表情となる。
けれどそれと同様に麗惺の表情も僅かに歪んでいた。
麗惺と雪也の違いはその表情が、すぐに消えたか否かだった。
「召使い?…(奨学金ってことは政界やブルジョアと繋がりを持つために無理やり入れられた口か…)」
「……主に奨学金制度を受けている庶民のことでございます」
「…それが山田君なんですか…」
「…(彼だって他の金持ちと変わりない…すぐに僕のことを蔑み相手をしろと言ってくるに決まってるんだ…僕たち召使い階級には王族階級に逆らうことは絶対に許されない)」
雪也は、その瞳に侮蔑を宿らせて麗惺を睨みつける。
しかし、いまだにその瞳に麗惺が映されることはない。
「…僕の案内は理事長が命じたんですか?」
麗惺は、寂しげな表情を浮かべそう言って視線を雪也から外す。
「!…は、はい…それが僕たちの仕事ですから…」
雪也は、麗惺の言動に戸惑った声を上げる。
今まで自分の顔を見てSEXの相手をしろと言ってきた奴らは腐るほどいた。
学園内ではどちらかと言えば地味な部類に入る自分だがそれでも体目当てな馬鹿どもははいて捨てるほどいる。
そして、こう言った用事を命じられるとき大抵相手がタチの場合は相手をさせられる。
今回だってそう思っていたし諦めていた。
屈辱に耐えるための心の準備もしてきた。
それなのに今この部屋にいるこの彼は自分にそんなことは命じなかった。
そんな些細な事にも驚き僅かに嬉しさを感じた。
そして思うのだ彼は他の奴らと違うのかもしれない。
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