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それほどまでに雪也はこの学園のひどさ・理不尽さを知っている。
「嫌なことは無理に話さなくて良いですよ…嫌な事を聞いてしまったようで、すみませんでした…」
麗惺は、そう言って優しく微笑むと再び本に視線を戻した。
「!…(この人…いや、この方は…)」
雪也は、麗惺の言葉に泣きたくなった。
中等部からこの学園に入れられた自分、そこで初めて味わった階級差別と屈辱。
それから三年以上自分は歯を食いしばり周りの金持ちを憎むことで何とか自分を支えてきた。
今までそんな自分にいや、自分と同じような環境の人間にこんな優しい言葉を掛けてくれた人間がいただろうか…。
答えは否。
学園の教師はS級のやることに否やを唱えるものはいない。
少しでも反論すれば己の身が危うくなることを知っているから…そして、それは王族以外の生徒たちも同じ。
王族の者たちは自分たちのやっていることが悪いだとか考えないし思うこともない。
彼らにとってそれが“当たり前”のことだから…。
しかし、目の前にいるこの人は違う。
「あなたは…僕を抱こうとは思われないのですか?」
雪也は、無意識にそう口にしていた。
あなたは他の奴らと違うのですかという意味を込めて…。
「…ええ…僕にそんな趣味はありませんし…何より…そんなことは“間違っている”と思いますから…」
麗惺は、今にも泣きそうに顔を歪めて瞳に縋る思いを宿した雪也を安心させるかのように優しく微笑みそう言った。
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