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明は、何も答えずにただただ笑っているだけだった。
「麻呼さーん、茶菓子はケーキがいいですか?それともクッキー?」
青年は、台所からひょいっと顔を出してとても楽しそうにそう尋ねてくる。
「あの、私のお土産でよろしければ、ケーキがありますけど…」
麻呼は、不意をつかれた質問に慌ててそう答える。
「じゃあ、今お茶持って行きますねー」
青年は、そう言って笑顔でお盆を持ってくる。
「どうぞー」
青年は、そう言って麻呼の前にコーヒーと砂糖、ミルクを置いて、明の前には、白い皿に入ったほんのりと甘くしたホットミルクを置いた。
そして、ニコニコと笑いながら麻呼の向かい側の席に座る。
「あのこれ、どうぞ」
麻呼は、そう言って青年の前にケーキの箱を差し出す。
「ありがとー、早速食べよう?君は何が好い?」
青年は、そう言ってホットミルクを飲んでいた明に尋ねる。
≪俺は、結構…ケーキは嫌いでね≫
明は、青年のほうを見上げて少し渋い顔をする。
彼は、甘いものが苦手なのだ。
「そう、じゃあ、麻呼さんは?」
青年は、同じ質問を今度は麻呼に向ける。
「皆さんに買って来たものですから、どうぞお構いなく」
麻呼は、ニッコリと愛想笑いを浮かべて丁重にそう断った。
「…じゃあ、こっちが出す分はいいんだ。それなら、このかわいいイチゴのショートを…はい、どうぞ」
青年は、邪気の無い笑いを浮かべて麻呼の前にイチゴのショートの乗ったかわいらしい小皿を進めてくる。
「…解りました。いただきます」
麻呼は、観念してイチゴのショートに手を伸ばす。
「うん。やっぱり未砂さんのお孫さんだな。しっかりと礼儀作法をわきまえてる」
青年は、麻呼が小皿を受け取ると嬉しそうに微笑んでそう言った。
「…あの、お名前お聞きしても構いませんか?」
麻呼は、青年に不思議そうな眼差しを向けてそう言った。
「まだ言ってなかったっけ?僕の名前は不知火 剛輝(シラヌイ ゴウキ)って言います。この探偵事務所の社員の一人です」
剛輝は、満面の笑みでそう答えた。
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