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「…祖母のことご存知なんですか?」
麻呼は、真剣な顔で剛輝を見つめてそう尋ねる。
「うん。未砂さんにはいろいろとお世話になったからね…最近とんと来なくなっちゃったけど元気にしてるの?」
剛輝は、無邪気に笑ってそう尋ねてくる。
その瞬間、麻呼と明の表情が曇る。
≪…未砂は、死んだよ…2月の末にな…≫
明は、低い声で静かにそう言った。
「え?本当ですか?」
剛輝は、信じられない様子で麻呼にそう尋ねる。
「ええ。私は、祖母の死体を確認していないので最近までは生きているかもしれないと心のどこかで信じていたんですけど…」
麻呼は、悲しげな表情で何かを思うような口調でそう言った。
「すみません。知らなかったものですから…」
剛輝は、本当にすまなそうに麻呼に謝った。
「いいえ、いいんです…ご存知じゃなかったんですから、そんなに気になさらないで下さい…ところで、古葉さん達はいつごろ戻られるんですか?」
麻呼は、何とか剛輝(ゴウキ)を元気付けようとそう言って笑って見せた。
「鏡と鷹は今、依頼人さんのところに行ってるんです…だから、早ければ後10分ほどで帰ってきますよ」
剛輝は、麻呼の気遣いが嬉しかったのか顔にほんの少し笑顔が戻った。
「そうですか。明、どうする?このまま待ってる?」
麻呼は、明の様子を窺うようにそう尋ねる。
≪…あいつらをわざわざ待つのもなー。この兄ちゃんにでも伝言頼んで、さっさと帰っちまう方が俺はいいなー≫
明は、鏡士郎と鷹雄の話題が出た事で再び不機嫌な顔でそう言った。
「またそんな事を言う。どうして、古葉さんたちに会うのがそんなに嫌なの?」
麻呼は、不思議そうにそう言って明に視線を向ける。
明は、そんな麻呼の問いを不機嫌そうな顔で聞いているだけで麻呼の質問に答える気は無さそうだ。
「ここにいる子、明って言うんですか?」
剛輝は、明と話す麻呼の方に身を乗り出して、不思議そうにそう尋ねる。
「ええ、不知火さんにも見えてるんですよね?」
麻呼は、鬼気迫る様子の剛輝に気圧されながらそう尋ねる。
「…いえ、僕はある程度の場所と声しか聞き取れません…」
剛輝は、少し寂しそうに眉根を寄せてそう言った。
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