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「え、じゃあ、完璧に見えているわけじゃないんですか?」
麻呼は、不思議そうな顔でそう尋ねる。
「普通の幽霊や妖怪は見ることが出来るんですけど、どういう訳か麻呼さんの隣にいるその子だけは、姿を捉える事が出来ないんです」
剛輝は、自分でも不思議そうに笑ってそう答えた。
「…明、剛輝さんに姿見せてあげなさいよ。解ってるんだから、わざと見えないようにしてるってことぐらい」
麻呼は、明をジトッと睨み付けてまるで命令するかのようにそう言った。
≪…解ったよ。悪かった、ちょっとからかってみただけだ≫
明は、麻呼の瞳に少したじろいた様子でそう言った。
「!」
剛輝は、突然見えるようになった明に驚いて言葉を無くす。
「…見えるようになりました?」
麻呼は、恐る恐る剛輝にそう尋ねる。
剛輝は、無言で首を上下させる。
≪…悪かったな。少しからかいすぎた…≫
明は、首だけで剛輝(ゴウキ)を見上げて真剣な表情でそう謝罪する。
剛輝は、無言で首を左右に振る。
「…この部屋ってなんだか変わってますね」
麻呼は、事務所の中をぐるりと見回してそう言った。
確かに普通こういった事務所というのは、じめじめと暗い印象がある。
しかし、ここはどちらかというとすっきりとしていてなんだか明るくさえ感じる。
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