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「…この真珠を他の誰にも渡したくなかったんでしょうね」
麻呼は、寂しげにそう言って真珠の上に手をかざす。
すると、麻呼の頭の中にいくつもの映像が流れ込んできた。
「どうかしたんですか?麻呼さん?」
剛輝は、真珠に手をかざしたまま黙り込んでいる麻呼が心配になりそう声を掛ける。
「この真珠の持ち主って全員、殺されてるんですね…」
麻呼は、剛輝を一瞥してから再び真珠に視線を戻す。
「!どうしてその事を?」
剛輝(ゴウキ)は、麻呼の言葉を聞いて驚きの余り顔色が悪くなる。
≪何か見えたのか?≫
それまで黙々とホットミルクを呑んでいた明が、不思議そうに麻呼を見上げてそう尋ねる。
「うん、みんなこの真珠がほしくてほしくて堪らなかったの。この真珠には、人の欲望を掻き立てるような力があるみたい…でも、ちゃんとお祓いをすればそんな怪異もなくなると思う」
麻呼は、真珠を見つめたまま優しげな微笑を口元に浮かべた。
その様子を、剛輝は、ただ黙って見ていた。
「…あの、他の箱も見て構いませんか?」
麻呼は、黙って自分を凝視している剛輝に遠慮深げにそう尋ねる。
「え、ええ、どうぞ!」
剛輝は、慌てて木箱を麻呼の方に押しやる。
麻呼は、ニッコリと笑って一番左の木箱に手を伸ばした。
中には、エメラルド色のブローチが入っていた。
「…これは…」
麻呼は、木箱を開けるなり表情を強(コワ)張らせた。
≪…どうした?≫
明は、明らかに様子がおかしい麻呼を心配そうに見上げてそう尋ねる。
「…一瞬、すごく禍々しい妖力を感じた」
麻呼は、真剣な顔でそう言ってブローチの上に手をかざした。
すると、またいくつもの映像が麻呼の頭の中に流れ込んできた。
≪どういうことだ?≫
明は、良く理解できない様子でそう言った。
「…これ、一度だけ呪殺のための呪具に使われてるの…そのときの術者がかなりの人だったせいでこのブローチに妖力が宿っちゃったみたい…」
麻呼は、真剣な顔でブローチに視線を落としたままでそう言った。
「それは、お祓いすればどうにかなる程度ですか?」
剛輝は、心配そうに麻呼の顔を覗き込んでそう尋ねる。
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