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≪…しかないだろ?ここ3週間の間、お前は運動できる状態じゃなかったんだから…≫
明は、軽い溜め息と共に伏せ目がちにそう言った。
「それもそうか、下手したら死んでてもおかしくなかったもんね…」
麻呼は、僅かに目を細めて自嘲気味に笑った。
というのも、彼女はつい3週間前に一度大怪我で死にそうな目に遭ったのだ。
≪…すまん。あのとき俺がもっとしっかりしていれば、お前があんな目に遭うことも…≫
明は、3週間前の出来事を思い出して険しい顔になる。
彼だって、3週間前は大怪我で生死の境を彷徨ったのだが、そんな事より麻呼の怪我のほうが彼には悔やみきれない事のようだ。
「!またそんな事を言う!言ったでしょ?あれはたんに私の力不足だって、どうして皆“自分がしっかりして要れば”って自分たちを責めるのよ。過ぎた事をどうこう言っても仕方ないでしょう?」
麻呼は、溜め息交じりにそう言って目だけで明に視線を向ける。
≪だが、あの時俺が…!≫
明は、向きになってさらに言い募ろうと麻呼を見上げた。
「ストップ!!それ以上、明が責任を感じること無いんだから…だから、この話はこれで終わり。今後、この話をいくら持ち出しても私は、取り合わないからね!」
麻呼は、明を威圧的に見つめて反論する隙を与えずにそう言った。
≪…わかった…ところで、一体何処に向かってるんだ?≫
明は、首だけで麻呼を見上げて苦笑交じりにそう尋ねた。
「あれ?言ってなかったっけ?」
麻呼は、驚いた様子で目を見開いてそう尋ねる。
≪言ってない…このまま行くと新宿副都心に出るぞ?≫
明は、前方にそびえ立つ都庁を見上げてそう言った。
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