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「翡翠」
たまに名前で呼ぶ。
この時のいくの声が、いつものあどけない声と違い低くて落ち着いてて…背筋がゾクゾクとする。
「いく…」
「名前呼んで」
「っ…伊球磨」
あたしの耳元にあったいくの口。
それがいま、あたしの唇に重なってる。
「真っ赤になって…かわいい」
「いくっ…」
いつまで経っても、慣れる訳ない。
恥ずかしいのは代えられない。
「ひー帰るよ」
「え?」
ん、と鞄を渡してくる。
そっか、今学校…。
ニコニコ、と笑ういくはいつも通り。
はい、と差し出された手。
…を無視する。
だって学校でキスって、あれじゃない…学校じゃしちゃダメでしょ。
それに何か…負けた気分だし。
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