01.野良猫の彼女。

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「翡翠」 たまに名前で呼ぶ。 この時のいくの声が、いつものあどけない声と違い低くて落ち着いてて…背筋がゾクゾクとする。 「いく…」 「名前呼んで」 「っ…伊球磨」 あたしの耳元にあったいくの口。 それがいま、あたしの唇に重なってる。 「真っ赤になって…かわいい」 「いくっ…」 いつまで経っても、慣れる訳ない。 恥ずかしいのは代えられない。 「ひー帰るよ」 「え?」 ん、と鞄を渡してくる。 そっか、今学校…。 ニコニコ、と笑ういくはいつも通り。 はい、と差し出された手。 …を無視する。 だって学校でキスって、あれじゃない…学校じゃしちゃダメでしょ。 それに何か…負けた気分だし。
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