「満身創痍」

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――黒猫は手紙をくわえると凛とした表情を親友へ向けた。 「手紙は確かに受け取った。後は任せろ。」 その姿は、今は動かなくなった親友にそう言っているように見える。 ☆★☆★☆★ 雪の降る山道を黒猫が走っている。今は亡き、親友との約束をその口にくわて… 「悪魔の使者だ!」子供が叫ぶ。黒猫に走る激痛、猫の額からは赤い血がしたたる。子供が石を投げたのだ。 黒猫は止まることなく走り続ける。「なんとでも呼ぶがいいさ…俺には…消えない名前があるから……」 ――ホーリーナイト(Holy Night)… 聖なる夜と呼んでくれた。優しさも温もりも全て詰め込んで呼んでくれた親友を想い黒猫はほほえむ。 (皆から嫌われた俺にも、生まれてきた意味があると言うならば、この日のために生まれてきたんだろう……何処までも走る!!)黒猫が一面の銀世界を駆け抜けていく。
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