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「大丈夫。大丈夫だから。」
春陽を落ち着かせるようにゆっくり、優しく言う。
背中をトントントントン叩くとやっと息を吐き出した。
「俺は誰だ?」
春陽の目をじっと見つめる。
「俺はお前に怖い思いをさせるか?」
春陽は首を横に振る。
「大丈夫だ。ちゃんと守ってやるからな。」
「…と…?」
(えっ!?今…。)
「ほん…とに?」
小さくかすれた声だけど今春陽は初めて喋ってくれた。
「ああ。ずっと守ってやるさ!」
春陽の頭をわしゃわしゃと掻き回す。その行動に驚いたのか「ゎっ」と小さく声をあげた。
「まずは顔洗わなきゃな。そんで朝ご飯だ。
ってことで春陽、持ち上げるぞ?」
さっきみたいなことになるといけないから一応一言断ると―コクリ―と頷いてくれた。
顔を洗ってからキッチンへと降り冷めてしまったフレンチトーストを温めなおす。その間にホットミルクを作り春陽の前に出す。
「ミルクは嫌いか?」
首を横に振り否定する。
「温めにしたけど熱いかもしれないから気をつけろよ。」
フレンチトーストを食べやすい大きさに切りながらちらっと見る。
恐る恐る口に運び、一口飲んだ後の春陽の表情はとても嬉しそうだった。目を輝かせてホットミルクをちびちびと飲んでいく。もしかしたら飲んだことないのか?
「味に保障はないけどな。」
ちょっと可愛らしいと思いながらフレンチトーストも出す。
「ぁり…がと…。あきにぃちゃ…。」
俯きながらボソッと言ったがちゃんと聞こえた。
(今、『ありがとう。あきにぃちゃん。』って言ったよな?)
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