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部屋の中にはお経を読む声と微かに聞こえてくる喪服を着たおばさん達のひそひそ話。そして呆然と遺影を持ち座っている俺。
「可哀相に…。事故ですって。」
「反対車線からトラックがぶつかって来て2人とも即死ですって。」
「明人くんは無事だったのね。」
「えぇ。家にいたそうよ。」
未だに状況が頭の中で整理出来ていなくて、さらにお経とひそひそ話とで頭の中は更にグチャグチャ。棺桶に入っている父さん、母さんを見ても実感がわかなかったし何より訳がわからなさすぎて泣くことさえ出来なかった。
「これからどうするの?明人君。」
幼い頃から知ってる一番親しい翠おばちゃんがぽつりと言った。
周りの大人達も気になっていたんだなぁ。聞き耳立ててるよ。
俺の両親は訳あり夫婦だった。
なんでもライバル社同士で、それぞれが長男、そして一人っ子の娘。で、駆け落ちとくれば勘当されても仕方ない。お金持ちの世界なんてわからないし興味がないから詳しくはわからないけど結婚相手は決められているみたい。そう思うと一般家庭でよかったと思う。
「俺はあの家を離れるつもりはありません。」
あの家には色々なものがいっぱい詰まっているんだ。離れるのが寂しくないと言えば嘘になる。
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