ⅩⅥ

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「お前にはちゃんと姿が視えるんだな」 「あ…」 感心したようにガイダに言われて、闇魔法使いには魔法を使わなければ視認出来ないという事実を思い出す。それも下位の妖精に限られるのだ。 「ほんとに光の魔法力を持ってるんだな」 「と、とりあえず、あっちな」 尊敬するような、羨ましいように言われて 何となく照れながら、妖精の集まる場所へと近づいてみる。 館の建物寄りの隅に設置された物資保管用の幕舎を回り込むと、積まれた木箱やら、藁束などの合間に二本の足がのぞいていた。 木箱を迂回してその足の正面に回ると、そこには箱に寄りかかって眠っているラシルが居て、手に巻きかけの包帯を持っていた。その周りでは真新しい晒木綿を妖精たちが端々を掴みあげたり、包帯の巾に裁断していたりと飛び回っていた。 「手伝ってくれて、ありがとう」 片膝を地面について、シェロウが小声で言うと妖精たちがその半透明な薄い羽を嬉しそうに閃かせた。 「…うわ、結構な数だな、ほんとに使役じゃないのか?」 魔法を使い、妖精を視認出来る状態にした途端、ガイダが半信半疑な問いをなげた。 「うん、みんな手伝ってくれてるんだ」 妖精たちは、ラシルに頼まれれば当然、頼まなくても自らの領分であれば、進んで手伝ってくれる。そしてラシルの笑顔を見ると喜んで舞うのだ。
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