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豊穣の魔法の施術が一段落すると、春の農作業が本格的に始まる。
「お世話になりました」
玄関先でシェロウは深々と頭を下げた。
「長とダリオン殿には、連絡しておいたから、何も心配要らない」
「はい、ありがとうございます」
シェロウは再び頭を下げ、玄関から出ると、移動の魔方陣を敷き、発動させる前に、もう一度ラシルに向かって頭を下げ、王都に戻っていった。
〈ふむ、寂しくなるのう〉
ラシルの肩の上で、ルーフェがしみじみ言う。
「また、すぐに会うことになる」
〈未来視かの〉
「うん……どうやら今回はかなり縁が深いらしい」
豊穣の依頼が済んで、落ち着いた頃に、ラシルはシェロウの行く末を占っていた。
(嵐の予兆……悪しきものの復活……光と闇の交錯……シェロウ……お前の運命の行方を見据えるのは、俺の役目らしい)
樹木の間から見上げる蒼空は、占いの暗示する未来を感じさせないほど、澄み渡っている。
「ルーフェ、しばらく留守を頼む」
〈わかっとる。トゥレイはどうするんじゃ?〉
「必要なら喚ぶから、適当に頼む」
〈はぁ、お前が居らんと拗ねるからのう〉
「仲、いいだろ?」
ラシルの問いに、ルーフェは諦めたようにため息をついた。
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