~Ⅲ~

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館全体を包む喧騒が、館の最奥にある長の執務室にまで気配を伝える。 「今日は、何か騒がしいな」 「そうですね。皆、昨日の通達のせいで浮き足だってますから」 二人の穏やかな会話を、扉を叩く音が遮る。 「入りなさい」 執務机に座る、この部屋の主が許可を出す。 少々、緊張した面持ちでシェロウが入ってくる。 「長さま、何か御用でしょうか?」 「お前に"暁"様の側付きを頼む」 闇の長の言葉に、シェロウは驚くと訊き返した。 「あの、私でよろしいのでしょうか?」 これには傍らの長の側付きが答えた。 「"暁"様と一番親しいのはお前だ、世話になったのだから、これぐらい当然だろう」 二人の視線が優しく見つめる。 館に戻ったものの、相変わらずシェロウの立場は弱い。長きの理由不明の不在を訝る者が居るのだ。 しかし"暁"の魔法使いという後ろ楯があれば、もはやシェロウをどうこう言える者は居なくなる。それを踏まえた上での指示なのだ。 「もうすぐ到着されるだろうから、出迎えて、ここまで案内するように」 「はい、わかりました」 シェロウが執務室を出ていくのを、二人は笑顔で見送った。
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