~一章~ 誘われし機人

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炎。 一面の炎。火の海。 元は人々が暮らす集落だったこの地はもはや原型を留めていない。 昨日までの平穏など知らぬかのように、灼熱の焔が躍り狂い、既に命を手放した物言わぬ骸が数えられないほど転がっていた。 言葉として呼ぶなら、戦場。 言葉として呼ぶなら、狂気。 悲鳴。怒号。 慟哭。叫び。 銃声。爆発。 狂兵の笑い声。 声にならない叫び。 確実に、また命が消えた。 勝利と安息を掴もうと、 生きる希望を掴もうと、 地位と名誉を掴もうと。 多くの大きな欲望が渦巻き淀み、意味を答えられない争いは激化していった。
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