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気付いた
気付きたくなかったとため息を付きながらアリババは恋人を盗み見た。
シンドリアの王と恋人になるとは初めて会った時は思いもしなかったが気が付けば好きになっていた彼から想いを打ち明けられた時は泣いた。
なんだかんだでバルバッドの第三王子である自分とシンドリアの王
ちぐはぐだが満足している。
…はずだった。
「アリババ君?」
顔を覗き込むシンドバッド王と目を合わせずに告げる。
「あ、貴方は酒が入るとそうなんですか。」
固い声と鋭い視線の先には女の子"達"にキスマークをたくさん付けられデレッデレのだらしない顔
いつものアリババが好きな気迫と気品に溢れた顔ではなかった。
「もう知りませんから!」
勢いで来たもの手持ちぶさたになってしまった。
宮殿の中庭で噴水の縁に座り途方に暮れていたら視界が陰る。
「どうかしましたか?アリババ君」
「…ジャーファルさん」
優しい笑顔の彼は隣、いいですか?と許可を得てから腰掛ける。
鋭いからきっと大体の事情は察しているはずだ。
「…シンと何かありましたか?」
確信している声音。
隣で苦笑いしているのが空気で伝わる。
「…あの人はいつもあんな感じ何ですか」
「あんな感じ…あぁ、女性関係ですか…困ったものですよね」
そういえばそれでいつもこの人も苦労してるんだな、なんて思ったり。
ジャーファルはクスクス笑いながら立ち上がった。
「でもアリババ君はシンの傍にいる。これで何回目ですか?その痴話喧嘩」
痛いところをつかれ言葉に詰まる。
シンドリアに来てからずっとこのやり取りを何回もし、その都度ジャーファルが間を取り成すのだ。(というよりシンドバッドに説教している)
「…あの人のところ行ってきます」
「そうですか、いってらっしゃい」
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