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***
――僕ハ。
――"感情"ヲ知リタイ―――。
***
春の、夕暮れ。
『蒼斗くん、話って・・・?』
『あ・・・その・・・。』
学校中に鳴り響くチャイム。
木の葉はうすくオレンジ色に染まっていた。
『ゆこの事前から好きだった。俺で良ければ付き合って。』
『ご・・・ごめんなさい・・・っ。』
・・・沈黙すらなかった。
そう言い残すと彼女はくるりと俺に背を向けて走り去った。
『・・・だよな。学年一のマドンナが俺みたいな凡人なんかと付き合うわけないか・・・。』
はぁ・・・。とため息をつく。
『フッ・・・帰るか・・・。』
髪をワシャワシャとかきあげて妙に爽やかぶる自分がイタい。
天川蒼斗17才。帰宅部。
座右の銘は平々凡々。
勉強も運動も容姿も、可もなく不可もなくと言ったところだ。
年齢と彼女イナイ歴が
イコールという忌まわしい記号で結ばれる可哀想なオトコ。
俺は独り残された校舎裏から
校門まで歩き出そうとした。
―――そのとき。
『待て、人間。』
バサッ。と、空を切る音。
俺は巨大な翼の影で覆われていることに気付き、呼ばれた方を恐る恐る振り向く。
『な・・・っ。』
つ、翼・・・!?、と。
背後にいたのは、鳥でもなく化け物でもなく、天使のような美しさの少女だった。
プラチナで丁寧につくられた糸のような銀色の美しい髪。
ミルクを思わせる白くてキメ細かく、柔らかそうな肌。
ほんのりと紅梅色に染まる
愛らしい頬。
人間離れした美しさだった。
『僕はリィラ。』
天使だ、と名乗られても驚かない美少女が口を開いた。
―――未来から来た、
アンドロイドだ。―――
『アンド・・・ロイド・・・?』
これが、
俺とリィラの出逢いだった。
***
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